Vol.76 信号

 治療の現場では「何らかの症状が出るのは病気の黄色信号・赤信号」と言われる。その信号を無視していればやがて本格的な病気になる。例えば現代に多いのがうつ病などの精神疾患や胃潰瘍・喘息などの心身症的疾患だ。その信号をもとに治療者が治療を進めていく過程がいわば“交通整理”と言えるだろう。

 その“交通整理”は具体的に次のように行われる。イヤと言えないで本人が頑張り過ぎていれば仕事量などの負担を減らす。本人が100パーセントを目指せば結果を出すのは難しいので100パーセントにこだわらず60パーセントでよしとする。言葉は悪いが「テゲテゲに」を心掛ける。

 また人間関係上のストレスも多いので、あらためて人間関係のあり方を見直すことになる。一般的な処世術として「言いたいことを言えばもめごとになるから言わないようにする」というものがある。しかし自己主張してはっきり断らないから多量の仕事を引き受けてしまうことも事実だ。そして疲れ果てて病気になる。従って我々治療者ははっきり言う。「自分の意見を言わないから人間関係がうまくいかない。逆である」と。

 以上のような“交通整理”は治療場面では普通のことだが、最近では職場でもそういう“交通整理”が行われるようになったように感じる。その“交通整理”を担う職場の上司は社員の信号を読み取り、最近配置されるようになったカウンセラーや精神福祉士などと共に職場内に起きた問題を職場内で解決していく。

 これは「社員の病気は職場にも問題がある」と捉えるようになった現れであり、病気が職場の問題から切り離され自己責任とされていたことに対する反省であるように思える。今や「100パーセントを目指せば結果を出すのは難しい。100パーセントにこだわらず60パーセントでよしとする」治療的な考え方が職場でも求められる時代になってきたような気がする。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です