Vol.73 アニメ(パート4)

 アニメ『ワンピース』に登場するヤブ医者は「人はいつ死ぬのか?不治の病におかされたときではない。人に忘れられたときだ」と語る。これは言い換えると「人は誰かに関わってもらわなければ一個の人間として存在しない」という意味だ。すなわち人は誰かに認められて初めて一個の人間として“実存”する。

 その彼の言葉には「相手が誰であろうが一個の人間として認めて行きたい」という決意が含まれている。そんな信念をこのヤブ医者は持っていたからこそ親からも群れからも見放されて“実存”していなかったチョッパーの相手になれたのだ。その結果、チョッパーは心を取り戻し“実存”することができた。

 一方、哲学的な意味での“実存”には「自分を自分でつくる」という積極性がある。それは『ワンピース』のメンバーが悪者と闘って成長していく姿で描かれている。

 さてヤブ医者は重い心臓を患っていたがどんな名医も治せなかったので死に宣告をされたも同然だった。そんなとき山であざやかな桜を見て感動して病気が良くなった。実際には重い心臓病が感動で治ることはないにしても症状が軽くなるということはあるかもしれない。そんな体験をしたので感動で病んだ人々の心を治す研究を始めた。すなわち桜を極寒の国に咲かせて感動してもらおうという夢だ。

 ヤブ医者はその桜の研究を30年間続けてようやく完成した。そういう彼の生き方がチョッパーに夢と希望を与え、チョッパー自身がどんな病気も治せるような医者になる決心をする。

 このヤブ医者はいかがわしい薬を煎じるがためにヤブ医者と言われるが、それは人物を強く印象付けるためのオマケのように思える。彼が最後に「良い人生だった」と叫んだところから見ると、その登場理由は人の心を救い夢と希望を与えてくれる人物の象徴であるように思える。

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