Vol.72 アニメ(パート3)

 少年漫画『ワンピース』に登場するトナカイ(名前;チョッパー)の存在が気になる。彼は生まれたときから鼻が青いという理由で群れからも親からも群れからも見放された。何とか仲間を作ろうと今度は人になる実を食べて2本足で立ち言葉をしゃべるようになったが、見掛けが完全な人間ではないために化け物扱いにされた。彼はもうトナカイでもなく人間でもなくなった。彼はもう何者でもなくなった。

 それは漫画上の空想世界の話ではなく我々の現実世界でもあり得る。すなわち例えば“deprived children(剥奪された子供たち)”の存在だ。彼らはまわりの誰からも認められなかったが故に“一個の人間”として存在しない。すなわち自己の存在を剥奪されて“非存在”の状態になっている。それはまるで“物”のような存在だ。

 この“deprived children”については書『被虐待児の精神分析的心理療法』(金剛出版)の中に出てくる。彼らの大きな特徴は大人に対する著しい不信感だ。従って彼らは施設に送られた後に治療スタッフと関係は大変なものとなる。スタッフの基本的態度は子供たちの攻撃に耐えることだ。が、ただ耐えるのではなく子供たちの心の中をよく理解して上で耐える。すなわちスタッフは子供の“怒り”を代わりに抱えることになる。その結果、子供たちの“怒り”の感情は和らぐと同時に自分を受け止めてくれる人と出会うことになる。以上のように子供は『認めてもらっている』と感じて初めて一個の人間として存在する。

 そのよう大人の役割をこの少年漫画『ワンピース』では二人の医者が担っている。人間に鉄砲で撃たれて傷ついていたチョッパーを助けたヤブ医者とチョッパーに医学を教えた女医だ。この二人が親代わりのような存在だ。すなわち親子関係をやり直したと言えるだろうか。

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