Vol.35 目鼻立ちがない(パート2)

 書『被虐待児の精神分析的心理療法』(金剛出版)は私が教育分析で出会った書物である。この書はイギリスの某施設のおける被虐待児と治療スタッフとの関わりの記録である。被虐待児というのは情緒的に迫害された子供のこと。彼らはまわりの大人に一個の人間として認められてこなかったために目鼻立ちがなく誰が誰だか分からない。

 精神分析では子供と親との関係が基本に論じられるが、実際に親が精神分析的心理療法の場面に登場することはなく、あくまでも心理療法家などのスタッフと子供との関係が重視される。スタッフは子供たちの攻撃性に遭いながらも根気強く関わり続ける。そうすることによってスタッフと子供の関係が形成されていく。そして子供たちは目鼻立ちが整ってきて自分の顔を持ち始める。

 この書の中で施設のスタッフは子供に対してどう接しているのか?それを見ていくと大人のあり方が次のように見えてくる。

 ①大人は不快な感情をすぐに吐き出さない。それをすれば攻撃的な子供と同じことを繰り返すことになる。

 ②大人自身に起こる怒りなどの感情は子供の感情でもありうることを理解する。

 ③大人は子供が安心して話せる人と場所を提供する。

 以上は子供に対する大人のあり方ですが、日常生活の対人関係における我々のあり方でもあります。つまり言い換えると次の通り。

 ⓐ我々は不快な感情をすぐに吐き出してはならない。すぐに吐き出せば攻撃的な人と同じことを繰り返すことになる。

 ⓑ我々に起こる感情は相手の感情でもありうることを理解する。例えば自分に対する怒りにじっと耐えていると、それが相手の怒りでもあることに気づく。

 ⓒ我々は相手が安心して話せる雰囲気をつくりたい。

 以上の通りですが、②とⓑは余りピンとこないかもしれません。おそらく治療者レベルのことでしょうが、自分に何か感情が動いたときはちょっと思い出してみるとよいかもしれません。

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