Vol.33 振り返ること

 私は音楽が好きでいろんなジャンルの曲を聴く。フォークソングの『風』もその一つだ。この曲は精神分析の北山修先生が作詞された。その歌詞の中に「・・・人はだれも人生につまづいて、人はだれも夢破れ振り返る・・・」という一節がある。人は人生でうまくいかなかったときにふるさとを振り返ったり、これまでの自分の人生を振り返ったりするものだ。それが人の自然な気持ちなのだろう。そう私は自分なりに解釈している。

 また人生うまくいかないときに病気になることもある。そんなとき人はどうなるだろうか?多くの人たちが後ろ向きになるものだと思う。そして振り返ろうとしている。それが私が医療現場で感じることだ。何を振り返ろうとしているのだろうか?心のどこかに引っ掛かっている何か。そして私たち治療者側は一緒に過去を振り返ろうとする。十分振り返ってまた未来に向かって生きて行こうとする力が湧いてくるのを信じて。

 一方『自分で自分をつくる』という考え方は前向きであり、それもまた私自身のポリシーの一つだ。また私が関わった心身症的なアプローチもおおむねそのような方針だったと思う。すなわち『自分の病気は自分で治す』ということを目指している。つまり本人が自己主張したり気持ちを出すことに取り組む。そこには本人の主体性や積極性が求められる。

 しかし本人が後ろ向きになっているときに急に前向きになることを求めるのは早すぎるのではないかと思う。十分に振り返って足元がぐらつかないようにしていく必要がある。まずは何が引っ掛かって前に進めないでいるか見つめることから始めたい。 

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