Vol.16 摂食障害(パート2)

 一般的で教科書的な事柄だが子供の成長にとって重要な時期として再接近期というのがある。歩き始めた子供が母親から離れて外の世界に出て行く頃だ。このとき子供が外でやれたことを親に誉めてもらえれば子供は自分一人でやれたことが自信になる。それが繰り返されることによって子供は自分で考えてやれる人間だという自覚が芽生えると言う。

 拒食症(AN)になる子供はまさにその逆である。親に誉めてもらうなどの機会の薄い子供は自分がまわりに認められる人間だとは思われない。さらに自分で考えてやれる自信が身に付かない。自立する姿はむしろ親に無視される訳だから、そこで親と結びつくために子供が選択する方法は親の気に入られるようにすることである。子供は反抗もせず従順になる。これが過剰適応というものだ。

 本人が学校などの社会場面に出てもこの過剰適応というやり方は変わらない。過剰ではあるが一応は社会に適応しているのでアイデンティティがあるように見える。しかし社会生活上の問題が起こったとき、特にそれは対人関係上のことであるが、相手に合わせるだけで自分の意見を言ったり行動したりできないので、結局どうしていいか分からず混乱してしまう。

 拒食症(AN)では本人は奇麗になるためにダイエットを始める。その背景にはやせがもてはやされるという時代背景がある。やせればみんなに良い評価を得られ賞賛の的になる。一方、心理的に言えば自分の思い通りにいかなくなった現実の中でやせることによって自分の存在感を取り戻そうとしている。

 さらにもっと別の面から見ていけば対人関係の有り様に問題がある。つまり、相手に合わせて相手の理想通りに動くというやり方だ。その起源は母子関係にある。子供が成長する段階で子供の言動に対し母親が良い反応を示さなければ、子供は母親に気に入られるような言動を取ろうとする。すなわち母親の理想像を取り入れて母親と一心同体のようになっている状態だ。それは子供本来の自己ではないので偽りの自己と言える。

 そんな状態で世に出て行くことになるが、いずれ思い通りにいかなくなる。そして悩む代わりにダイエットを始めることになる。本人はやせることに満足するが、やせすぎるとまわりは心配する。それは母親に心配させ反抗することを意味している。それまで母親に合わせていた子供が自分を主張し出したのだ。

 従ってそれは一心同体になっている母親からの分離の第一歩である。すなわちやせて良い評価を得たいというウラで偽りの自己から真の自己へと脱却しようとしている。自立するための第一歩だ。

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