Vol.12 転移と逆転移(パート1)

 治療の現場で我々が気づくことは治療者側にもPt(患者)側にも様々な情動が起こっていることだ。私は心身症に携わっていた頃その情動の意味が分からず混沌とした心境に陥った。その後少しずつ分かってきたことは次のようなことである。

 Ptは治療者に対して様々な感情を抱いている。これが転移であるが、Ptは無意識のうちに自分にとって重要な人物像を治療者の上に重ねて見ている。さらにそれに反応して治療者側に様々な感情が生じるのが逆転移である。逆転移というと治療者の気持ちがぐらついているようで良くないイメージがあるがそうではない。実際は治療上重要な意味を持っている。

 すなわち治療者はそのとき自分に生じた感情を見つめることによってPtを理解することができる。つまりそのとき治療者はPtと同じ気持ちになっているということだ。例えば、私は心身症に携わっていた当時、Ptに起こる様々な情動やら自分に生じた様々な情動やらで混沌とした状態だったが、その私の心境はPt自身もそういう心の状態だったということだ。

 以上のように治療者自身も自己を見つめる必要があることを改めて痛感させられた。また転移という面から人間関係を捉えていくと現在の人間関係と過去の人間関係とがつながっていくことになる。

 我々がものごとを認識する場合、必ず自分独自の感じ方や考え方を通して行っているので実際とは違うものに変形されることになる。しかもそれは多分に空想的のようだ。つまり他者との関係も空想的に捉えられ変形されて心の中(内的世界)に蓄えられる。

 その心の中の対象関係が外の世界の誰かに転じて移される(転移)ので、ただ単に自己の重要人物との関係がそのまま他の人との関係に再現されるという訳ではない。

 その重要人物というのは第一に考えられるのが本人の親である。その関係が良くないものであれば、他の誰かが親に重なったときに無意識のうちに我々は怒りをぶつけてしまうだろう。そしてぶつけられた側にも何らかの感情が起こる(逆転移)。その転移や逆転移は我々の日常生活の中でいつでもどこでも起こっていて人間関係の基本の部分を占めている。が、その意味が日常場面で解釈されて語られることはない。

 それはやはり治療者によるしかない。そのとき問題となるのは治療者自身が感情的になるときだ。それは病的逆転移でありまだ解決されていない治療者自身の葛藤が現れていることを意味している。従って治療者自身がその解決に取り組む必要がある。

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