Vol.3 朝ドラ

 H8年のNHKの朝ドラ『ひまわり』は主人公Nが現実の厳しさに立ち向かいながら弁護士になっていくという物語。20年間行方知れずだった父親が突然帰って来てからドラマが大きく動き出す。親子の葛藤、嫁と姑の葛藤、親友間の葛藤などが一気に吹き出し、家中大騒動になる。

 それまで大人たちは問題の核心に触れないよう、家族の間でイヤなことは思い出さないようにしていた。そのため家族は幸せに仲良く暮らしているかに見えたが、娘は不器用な生き方しかできず、息子は進路が決まらず腰が落ちつかない状態だった。

 OL時代、Nは体の良いリストラに遭い会社を辞めた。そんなとき弟が窃盗事件に巻き込まれたのをきっかけに弁護士になる決意をする。アルバイトをしながら司法試験の勉強をしていたところに父親が突然帰ってきた。

 父親は何か大きなことをやり遂げたいと家を出て行った団塊の世代だが、家を離れてやっと『現実の身の回りの日常のことが大事だ』と気づき出した。また『逃げてきたものに向き合わなければ自分の人生が中途半端になる』と思うようになり家に帰りたくなった。

 しかし何者にもならなかったので今さら家族に会わせる顔はない。そして弟が店をオープンしたのをきっかけにその店にこっそり出入りしていた。そこでNとはち合わせする。結局、はち合わせという形ではあったが、父親は念願の家族との再会を果たした。しかし主人公は何者にもならずに帰って来た父親を認めることができない。理想のと現実のギャップに悩む。その後、父親は身のまわりの現実の問題に取り組み始め、それを目の当たりにして主人公は父親を見直し始める。

 ある日父親はNのアパートを訪ね、直接向き合って自分の気持ちを話した。Nは心の底では父親の気持ちが分かる気がした。なぜなら父親の話を聞きながら父親と同じような生き方を自分もしていることに気づいたからだ。N自身、このままでは何者にもなれないと言い張って弁護士の道を突き進んでいた。また、家を出て安アパートで受験勉強を始めると苦労の連続だったとき、実家に戻って勉強することになり家庭の有り難さに気づいた。

 しかし父親にしてみれば学生運動に参加したのも自立した自分を夢見たためだ。が、それも途中で脱落。次には何か闘いの場を求めて家を出て行ったものの失敗。そして闘いの場は自分の家に移り、悪戦苦闘の毎日が始まった。結局、その闘いの中で父親は積極的に問題の場面に向き合う。そこには失敗してもいいからチャレンジするという精神が存在する。

 このドラマの作者は脚本家の井上由美子氏。昨年、某新聞の『おやじのせなか』に井上氏の記事が掲載されていた。同氏が父親の背中に見たものは「たとえ失敗しても好きなことをやる」という姿だった。そういう父親から受け継いだ生き方が、『ひまわり』の中で“のぞみ”とその父親の生き方にも反映されていた。

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